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2021/05/30

ヘルシンキの芸術プロジェクト「The Academy of Artistic Thinking」

街のあちこちで鮮やかなブルーの紫陽花を見かけるようになり、梅雨間近の季節を実感します。

さて、2月21日のブログ記事で一部紹介しましたヘルシンキの芸術プロジェクト「The Academy of Artistic Thinking」についての記事を公開しました。

2018年から2021年にかけてヘルシンキで行われた、ジャンルの垣根を越え芸術に
ついて考察する企画、そしてその集大成として今年初旬に行われた公演「Kierrot (キエロット)」についてのレポートです。写真や動画、音源も紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

https://www.dropbox.com/s/794onja60z40ecz/AAT%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88.docx?dl=0


(© AAT)


2021/05/08

音楽から絵画、あるいは絵画から音楽へ

異なる芸術分野における表現、特に相互間でインスピレーションを得たときの「表現の変換」 について。

ある音楽をもとにして描かれた絵、また逆に絵からインスピレーションを得た曲は世の中にたくさんあります。よく知られた例としては、絵→音楽ではドビュッシーの「金色の魚」、ムソルグスキーの「展覧会の絵」、音楽→絵ではクレーの「パルナッソス山へ」、マティスの「ジャズ」などが挙げられます。受けた印象や自らの思考を音楽または絵に反映させる際、作品を要素ごとに分解して変換したり、あるいはストーリーを想像したり…と、方法や過程はそれぞれ異なります。

以前このブログで、当時私が練習していたピアノ音楽「アルマクの砂場」をもとに描いた絵を載せたことがあります。このときの絵では、鋭い音の多い曲では図形も直線的で角ばった形になり、静かで休符・余白の多い曲だと描線が細く、絵の余白も多くなっています(そういえば、ブーバ・キキ効果というものもありますね)。

これらは無意識に行っていたことですが、その一方で曲のタイトルや背景といった知識が絵に与えた影響もあります。例えば「模倣」をテーマとしている第3楽章では、劇場のシンボルとして使われる仮面らしきものをメインのモチーフとして描いています。確かに曲だけ聞いてもカノン的な要素が聞きとれますが、この曲のテーマを知らなければ、仮面のような具体的なものはおそらく描かなかったでしょう。

ちなみに、こちらは絵画ではなく粘土の造形ですが、曲の背景をほとんど知らずに取り組んだ例をやはり以前アップしたことがあります。このとき聞いた曲は演奏時間20分、無調で比較的ゆっくりで穏やか、それでいて時折変化のある曲想でした。このときは、他にも参加者がいたのですが、川のある土地のようなもの、またはカモメのように具体的な形を作る人、あるいは紙と粘土を丸めて抽象的な形を作った人、様々でした。

聴覚と視覚、時間の有無…など、異なる分野の間でどのように影響し合い、表現が受け継がれるのか、検証してみると面白いですね。

※今回の内容はこちらの記事(英語)でも紹介しています。

 

 (パウル・クレー「パルナッソス山へ」 出典: https://www.musey.net/32856)