このブログを検索

2019/10/24

ピアノ二台二手 - G. F. ハース「リゲティへのオマージュ」

私はグラーツで現代音楽を勉強していたのですが、そのときの思い出のひとつがこちら。



普通2台ピアノの曲は平行あるいは向かい合わせにして2人で弾きますが、今回は写真のような角度で配置して、両方の鍵盤を一人で弾きました。
弾いたのはこの曲。



George Friedrich Haas作曲「リゲティへのオマージュ」。
少しずつ変化していく和音を20分間ひたすら連打し続ける、なかなかハードな曲です。
手のポジションに合わせて座る位置を移動しなければいけないので、学校の事務室からキャスターのついた椅子を借りて演奏しました。

この曲、よく聞くと何だか歪んだ響きがしませんか?実は、右側のピアノが敢えて1/4音低く調弦されています。2台のピアノで同じ音を弾いても、微妙にずれて聞こえるよう効果を狙っているのですね。

作曲家によると、自分と奥様それぞれのピアノが同じ部屋に並べておいてあったそうですが、この調弦のアイディアを奥様に話したところ、「いいわよ、でも調弦を施すのはあなた自身のピアノにしてよね」言われたそう。それで自分のピアノが右においてあったので、右手側のピアノを調弦することになったとのことです。

特殊な調弦は場合によって楽器に負担になることがあるので、普通の演奏会場ではなかなか許可が出ないこともあります。この曲を演奏したのは学校のホールでしたが、使用して良い楽器がきちんと決められていました。こういった曲の演奏は会場の理解もないと成り立たないので、貴重な体験をさせていただいたのだと改めて実感しました。


2019/10/05

絵の中の楽譜 - 音楽家が気になることその2


よくポストカードやイラストに、楽譜がモチーフとして使われていること、ありますよね。それらを見かけると、つい「何の曲だろう?」と、その楽譜を読みたくなってしまいます。

モーツァルトなどの誰もが知る名曲のこともあれば、全くもってでたらめなこともあります(笑)

例えば下のチェロの絵。左上と右下に楽譜がコラージュされていますが、ここではベートーヴェンのピアノソナタ24番、25番、29番(ハンマークラヴィーア)が使われています。
(Rosina Wachtmeisterという方の作品で、私が大好きな画家のひとりです。よく猫をモチーフにした作品を描いています)


 (出典: art.com)


そして、こちらのポストカード。

(出典: www.happypostcards.de)

「雨の旋律」という何とも素敵なタイトルですが、使われている楽譜は…
 
ラヴェルのスカルボ。


月夜に照らされた部屋のなかで転げ回り、笑い声を立て、最後は天井高く伸びたかと思うと半透明になって、不意に消えてしまう…という悪戯好きな妖精。
ピアノ曲の中でも難曲中の難曲として知られています。

意図して選んだ楽譜ではないにしろ、イラストとのギャップに思わず笑ってしまった1枚でした。